臆面もなく自画自賛できる人間でなければ、政治家にはなれないし、務まらないものだ。「大した取柄も、経験も、実績もありません」などと謙遜していたのでは、まず選挙で相手にされないし、生き馬の目を抜く永田町では生き残れない。うそ偽りは論外だが、多少の誇張は芸のうちと言っていい。 戦前の浜口雄幸内閣の逓信大臣を務めた祖父又次郎以来の政治家の家系に生まれ、既に国会議員歴三十年、首相の座を手中にした小泉純一郎氏もまた、その能力に長けた人物であることは疑いない。しかし、「それにしても」と感じずにはいられない言動が最近の首相には目に付く。七月十一日配信のメールマガジン「らいおんはーと」はその極め付きだ。 メルマガ配信一周年を記念し、ビデオカメラに向かって語る首相の生映像を同時配信したこの特別号のタイトルは「実感! 改革の手応え」。冒頭のあいさつに続き、首相は「改革は着実に進んでいるという実感が日に日に湧いてきた。野党の皆さんは『小泉改革は掛け声倒れだ』とかよく言っているが、実際は、掛け声通りに着実に進んでいる」と語り始めた。 その「いい例」としてまず挙げたのは、六月二十一日に発表した道路関係四公団民営化問題に関する首相の諮問機関「民営化推進委員会」委員の人選だ。詳しくは後述するが、首相は自民党道路族が目の敵にする民営化推進の急進派、作家の猪瀬直樹氏を七人の委員の中に加えた。

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