世界を揺るがせた米国同時多発テロは、おそらく物語の終わりではない。このままでは、富める国は「不満の海に浮かぶ繁栄の孤島」になる――そう警告し続けてきたケネディ教授が、先進国のとるべき道を説く。 五百年におよぶ大国の興亡の歴史を俯瞰した世界的ベストセラー『大国の興亡』(一九八七年)の中で、ポール・ケネディ教授は「手を広げすぎた帝国」の危険を冒しつつあったアメリカ合衆国は、大英帝国と同じく衰退の道を辿る可能性があると示唆していた。しかし、九〇年代、アメリカは情報革命によって驚くべき復活を遂げ、ケネディ教授の予測は外れたかに見えた。 だが繁栄の象徴であった世界貿易センタービルがテロ攻撃によって無惨に崩壊し、一連の不正会計疑惑で米国型資本主義の本質が問われている現在、冷戦後、唯一の超大国として栄華を誇ってきたアメリカの足下が再び大きく揺らいでいるようにも見える。 歴史的視野から眺めた時、我々はいまどこに立っているのか。アメリカは、世界は、どこに向かおうとしているのか。歴史家の目で見た「9.11」後の世界を探るべく、エール大学にケネディ教授を訪ねた。近代国家制度の危機か?――「9.11」を歴史的に位置づけすると、どういうことになりますか?

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