手詰まり日銀に打つ手はあるのか

執筆者:石本量司2002年9月号

量的緩和に踏み切ってからすでに一年半。いっこうに上向かない景気を前に、日銀に「さらなる手段」を求める声も強まっている。しかし、金融の機能不全が解消しないままで、果たして日銀に打つ手はあるのか……。「もはや打てる手はなくなった。女房でも理解できる政策じゃないと、やっても意味はないよ」。ある日銀幹部は苦笑しながらこう述べる。 日銀は八月八日―九日の政策委員会・金融政策決定会合で、日銀当座預金残高の目標値を十兆―十五兆円に誘導する現在の量的緩和政策の維持を全会一致で決めた。量的緩和に踏み切ってからすでに一年半。この政策は公定歩合や短期金利の変更などかつての金融政策に比べ、「分かりにくい」点は否めない。「日銀当座預金」を増やすと経済全体にどういう変化が起きるのか。そのメカニズムに精通している金融マンはさほど多くない。 量的緩和政策の効果がどうあれ、景気動向は不透明感を強めている。日銀にも「次の一手」が求められる局面が、早晩やってきそうな雲行きだ。果たして「次の一手」などあるのか定かではないとしても……。量的緩和は「全く効果なし」 誰でも分かる金融政策は「利上げ」と「利下げ」だ。バブル崩壊後の「失われた十年」で利下げはやり尽くした。冒頭の日銀幹部ではないが、「国民にとっての金融政策」はゼロ金利をもって終わったと考えていい。その後にやってきたのが量的緩和だが、これは金融マニアの趣味の領域に属する政策である。

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