北朝鮮で開始された不思議な「改革」の行方

執筆者:田中明彦2002年9月号

 北朝鮮で起こる出来事に、不思議でないことはない。サッカーワールドカップの最中の黄海での銃撃戦も不思議であったが、七月に入って、この銃撃戦に「遺憾」の意を表明したのも不思議であった。その後、ASEAN地域フォーラム(ARF)に出席した白南淳外相が、日本やアメリカを相手に精力的な外交を繰り広げたのも驚きであった。 さらにまた、このような外交攻勢とほぼ時を同じくして、北朝鮮国内で配給制の一部廃止などの経済政策の変化が報じられた。その政策の内容を「改革」とみるかどうかが焦点であるが、「改革」とみるにしても不思議な政策が開始されたようなのである。当面、北朝鮮の動向が国際的メディアの関心事項となるだろう。ハイパーインフレの懸念も―― 北朝鮮に何か変わったことが起きていると英語メディアで大々的に報道したのは『エコノミスト』誌であった。北朝鮮での取材に基づき、同誌は、七月一日から賃金と物価の大幅な調整が開始されていることを報じた。「世界で最も秘密のベールに包まれた国に相応しく、潜在的には、その政治史上最重要ともいい得る変化が、何の公式報道もなく始まった」という。米の値段は四百倍、ディーゼル燃料は四十倍、電気は六十倍に上がり、賃金も二十倍程度上昇するというのである(“Open sesame”『エコノミスト』、七月二十七日号)。

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