[ウィーン発]革命の一般的歴史法則からすれば、寄り合い所帯の革命勢力が旧体制打倒に成功した後は、まず急進派が力を得る。その伝に倣えば、今のユーゴスラビア(セルビア、モンテネグロ両共和国で構成)の政治情勢は、ミロシェビッチ前政権を葬り去った二〇〇〇年十月の民主革命後、親欧米・急進改革派のジンジッチ・セルビア首相派が、穏健民族主義勢力であるコシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領陣営の力を削ぎ落としつつ、自らの「絶対的権力」確立に向けてやみくもな体制整備を狙っている段階に当たる。 こうした中、九月二十九日に実施されるユーゴ連邦セルビア共和国大統領選挙は、両派が盛衰を賭ける「民主革命後の天王山」であり、民主勢力の内部権力闘争に終始した「革命第二幕」の大団円を意味している。 だが、結論を先に言えば、連邦大統領から鞍替え出馬したコシュトニツァ(セルビア民主党党首)が大統領選で勝利を収めることはほぼ固い。ミロシェビッチ体制崩壊後に乗り込んできた「経済進駐軍」、国際通貨基金(IMF)の指導の下でジンジッチ・セルビア内閣が市場経済改革を進める中、過去十余年にわたってバルカン紛争の震源となってきたセルビア民族主義は依然、衰えを見せない。それどころか、旧ユーゴ国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)で裁きを受ける身となっているミロシェビッチ前ユーゴ大統領が拘置先から発した檄に応える形で、過激民族主義者シェシェリ候補(セルビア急進党党首)の支持率が急上昇する現象も起きている。

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