FRBに打つ手は残されているのか

執筆者:斉藤大輔2002年10月号

金利は実質ゼロとなり、金融政策の余地は限られてきた。FRBにはインフレ目標政策の採用を模索する動きもあるが、他ならぬグリーンスパン議長が強硬に反対している。[ワシントン発]「二〇〇四年も再選される」。このところワシントンでは、こんな噂が広がり始めている。米大統領の話ではない。米連邦準備制度理事会(FRB)のカリスマ議長、アラン・グリーンスパンについてだ。 議長在任十五年になるグリーンスパンは、米国はおろか日本でも良く知られた存在となった。一九八七年、「インフレ・ファイター」として世界的に著名だったポール・ボルカーの後任としてFRB議長に指名された際には、「ボルカーに比べて小粒」との評が一般的だったが、就任直後の株価大暴落(ブラック・マンデー)の際、緊急の流動性供給を表明して危機を乗り切ると、徐々にその手腕の確かさに市場関係者は瞠目し始める。 その後にグリーンスパン議長が発揮した手腕を数え上げれば、その評価がもはや「神格化」と呼ぶレベルに達していても驚くには当たらない。九〇年代初頭、米銀危機の際の超低金利政策。九六年、株価急騰時の「根拠なき熱狂」(irrational exuberance)発言。九八年、ヘッジファンド危機の際の緊急利下げ。九九年から二〇〇〇年の景気過熱抑制のための利上げ。二〇〇一年以降、景気低迷に対応した計十一回、累計四・七五%にも及ぶ積極利下げ。二〇〇一年、同時多発テロ直後の緊急利下げと流動性供給……。

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