機密費問題など一連のスキャンダルに揺れ、幹部の首が次々とすげ替えられた外務省で、この一年半、日朝首脳会談に向けた北朝鮮との非公式折衝の経緯は、「極秘の引継事項」として、川島裕元次官、野上義二前次官、そして今年二月に就任した竹内行夫次官へと申し送りされてきた。 森政権時代の昨年一月にも北朝鮮が首脳会談開催を打診してきたことは、今では周知の通りだが、拉致被害者の第三国発見方式を口にするなど、森喜朗首相の言動の軽さを危ぶむ声が外務省内には強かった。ある外務省幹部は、「森さんでは何を言い出すか分からなくて危なっかしく、首脳会談は任せられないという空気があった」と打ち明ける。 その後、森首相は退陣。小泉首相が登場するが、外務省にとっての新たな“障壁”は田中真紀子外相だった。 経緯を知っていた次官の一人は、「金正日が(日本の首相に)会いたがっていることを真紀子の耳にだけは絶対に入れるわけにはいかなかった。知られたら、『その前に私が行く』と言って、すべてぶち壊しになるからね」と述懐する。 従って、田中外相時代、北朝鮮からの一次情報を手にするのは、外務次官、田中均アジア大洋州局長、平松賢司北東アジア課長に限定された。これに同局の佐藤重和審議官が必要に応じて加わるが、田中真紀子氏の後任となった川口順子外相も、「蚊帳の外」に置かれたことに変わりはなかった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。