対北朝鮮「支援金」を狙う“ハイエナ”たち

執筆者:藤村幹雄2002年10月号

 日本と北朝鮮の国交正常化には必ず補償問題が付いて回る。小泉純一郎首相の突然の訪朝発表を契機に、支援金とも補償金とも言われるジャパン・マネーを狙った動きが、水面下で慌しくなっている。 ロシアと北朝鮮の懸案の一つに旧ソ連時代の債務返済問題がある。ロシアが引き継いだ債権総額は推定三十―四十億ドル。経済破綻した北朝鮮は、約一万二千人といわれる木材伐採労働者をロシア極東に労働輸出して少しずつ返済しているが、焼け石に水。事実上焦げ付いた状態だ。毎年開かれる露朝経済政府間委員会でも債務返済問題が取り上げられ、北朝鮮は債務帳消しを要請、ロシアは拒否している。北朝鮮を再三訪問するプリコフスキー極東管区大統領全権代表が「借金取立人」である。 去る八月二十三日、ウラジオストクで開かれた露朝首脳会談でも債務返済問題が議題となり、プーチン大統領は不透明な債務残高を確定するよう金正日総書記に求めた。同大統領は会談で日朝関係正常化を強く促したが、その背後には正常化時に日本から入る支援金への期待があったかもしれない。 ロシアが朝鮮半島外交を重視するのは、経済的利害が絡むからだ。ロシアは韓国に十八億ドルの債務を負うが、韓国が北朝鮮の対露債務の大部分を肩代りすれば、南北への債権国となる。ロシアは南北鉄道の東海線、京義線とシベリア鉄道の連結による「ユーラシア鉄道」の完成で、日本・韓国と欧州間の鉄道輸送による利権を狙っている。さらに、北朝鮮軍は旧ソ連製装備の更新時期に入っており、兵器市場となり得る。

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