ロシア極東からシベリアにかけて不法滞在者を含む中国人が急増しており、プーチン政権が懸念を強めている。大統領は先の極東訪問でも「移民がロシア人の職を奪っている」と警戒感を表した。 経済危機からの回復が遅れるロシア極東では、一九九一年から百二十万人の住民がモスクワなど欧州部に移動。特に疲弊が激しいのはマガダン州で、住民の五七%が流出。カムチャツカ州では人口が二〇%減少した。 こうした空白の一部を埋めているのが、中国人の不法労働者や商人たちで、合法的な滞在だけでなく、麻薬取引にかかわる中国系の犯罪組織の活動も目立つ。また、中露国境の川の中間にあって帰属が確定していない大ウスリー島では、中国が川を中国側から埋め立てて地続きにすることで、島を中国領土にしようとしている。 ロシアは中国を表向きは「戦略的パートナー」と持ち上げる一方、中国の不法移民放置や国境地帯での乱暴な行為に神経を尖らせている。北朝鮮への影響力をめぐるライバル意識や、プーチン政権の親米路線への転換もあり、中露蜜月時代は「終わりの始まり」を迎えているのかもしれない。

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