この夏、ヨーロッパや中国を襲った大洪水は甚大な被害をもたらした。異常気象の原因は、「温暖化」や「エルニーニョ」だけで解明できるほど単純ではない。 中国や欧米でこの夏、相次いだ洪水や干魃。一連の異常気象は土砂災害などによる死者を出すだけでなく、世界経済にも深刻な打撃を与えかねない。実際、中・東欧の大洪水は数千億円にのぼる被害を出した模様だし、米中西部などの水不足で米国の農作物出荷量も昨年に比べて大きく減少するのは避けられない見通しだ。海外の異常気象が目につくが、日本も例外ではない。気温や雨量の記録を塗り替えた地点こそ少ないものの、夏の天気としてはやや変わっていた。 台風の襲来が多く、七月十一日には台風六号が千葉県南部に上陸。十六日には台風七号が伊豆半島に上陸後、千葉県南部に再上陸した。七月の台風の平均上陸数(一九七一年から二〇〇〇年までの平均)は〇・五七個。二個も上陸したのは一九九三年の三個に次ぐ記録だ。しかも、わずか一週間の間に二個の上陸というのは極めてまれである。八月二十日前後にも台風十三号が伊豆諸島付近を通過し、東日本一帯に強い風雨をもたらした。 夏の盛りで、台風のエネルギー源となる海の水温も高いため、これらの台風は勢力を弱めないままやってきた。しかも、太平洋高気圧などに行く手を阻まれて動きが遅く、長時間にわたって断続的に強い雨が降った地域が多かった。また、日本の南半分では日中の最高気温が三十五度前後、夜間の最低気温も二十五度以上の熱帯夜となる日が何日も続いた。大気汚染物質の影響も重なって、関東地方の内陸部などでは、最近めっきり減っていた光化学スモッグ警報が何回も出た。

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