小倉昌男 清々しき老年を体現する者

執筆者:水木楊2002年10月号

 あと十数年もしたら、日本は四人にひとりが六十五歳以上の高齢化社会を迎える。地位にしがみつく者、富に執着する者、勲章を欲しがる者――老醜のオンパレードになるおそれもあるが、一方では、活動的で清々しい老年を体現する人がみなの共感を呼ぶ時代にもなるだろう。 小倉昌男、七十七歳。ヤマト福祉財団理事長。クロネコヤマトの宅急便で知られる、今日のヤマト運輸を築いた事実上の創業者として名高い。 新幹線JR米原駅から車で北西に十五分ほど。琵琶湖に面して立つホテルの二階で「小規模作業所パワーアップセミナー」が開かれていた。ヤマト福祉財団は同じセミナーを一年間に十回ほど開く。セミナーのサブタイトルはみな「一万円からの脱却を目指して」。 障害者を持つ親たちが共同で作る「作業所」が全国に五千以上ある。ここで障害者たちが働く。しかし、彼らの月収は押しなべて一万円以下。中には二、三千円というところもある。これを一万円以上にするノウハウを授けようというのがこのセミナーの目的である。 この日の出席者は作業所のほか、同じ目的の認可法人である授産所の職員たちで、二十三名。会費は五千円。これで二泊三日、食事付き。往復の交通費も出る。

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