骨抜きにされる司法制度改革

執筆者:矢吹信2002年10月号

各論の検討段階に入った司法制度改革は、既得権維持に走る法曹三者の抵抗を前に足踏みしている。法曹人口の拡大や裁判の迅速化など、具体的な成果は果たして期待できるのか。 司法改革が頓座している。昨年六月、政府の司法制度改革審議会がまとめた最終意見書を受け、今年一月から司法制度改革推進本部(本部長・小泉純一郎総理)が各論の見直し作業に入っているが、弁護士・検察・裁判所の法曹三者を中心とした司法関係者が既得権擁護に走り、改革の理念は忘れ去られようとしている。 七月五日、首相官邸で開かれた司法制度改革推進本部の顧問会議。同会議は、法曹三者と財務省、総務省などの官僚で構成する推進本部事務局が改革にきちんと取り組んでいるかどうかを監視する機関だが、その場に出席した小泉総理はこう挨拶した。「“思い出の事件を裁く最高裁”という川柳があるが、司法制度が国民の思いからかけ離れている現状を皮肉ったものとみるべきだ。改革でまず必要なのは法曹人口を増やすこと。次に国民にとって頼りがいのあるものにするため、迅速な判決、迅速な権利の実現を期待できるものにしなければならない」「具体的な目標として、裁判の結果が必ず二年以内に出るように改革していきたい。刑事・民事とも、地裁の判決が出るまで五年、十年という時間が費やされる現状はひどすぎる。判決が下っても、その執行によって、権利の実現が速やかに図られなければ、国民の信頼を勝ち取ることはできない」

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