小泉純一郎首相が平壌に乗り込んで再開を決めた日朝国交正常化交渉は、日本人拉致問題に対する北朝鮮と日本外務省の対応のまずさから、行く手に暗雲が垂れこめてきている。 だが、日朝双方の政府は、日本の世論の動向とは無関係に、既に国交樹立を既定路線として、さまざまな準備に着手している。そのひとつが、極秘に進められている両国の大使館開設準備だ。 外交筋によると、経済危機に苦しんでおり、国交正常化による経済支援がノドから手が出るほど欲しい北朝鮮は、平壌の一角に日本大使館となる建物をすでに決めている。北朝鮮では対日国交樹立は金正日総書記の決裁が済んでおり、独裁国家の歯車はその方向に動き出しているのだ。 一方の日本側も、密かに北朝鮮大使館の用地や施設の選定に入っている。だが、外務省としては拉致問題で世論が沸騰している今、これが表沙汰になることは避けなければならない。また、外交関係の樹立に成功しても、北朝鮮への険悪な国民感情が残ることを考慮すれば、警備の問題も大使館用地選定の重要な要素となり、選択肢は狭められている。

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