なぜ中国は「一人っ子政策」を続けるのか

執筆者:若林敬子2002年11月号

二十年以上続く中国の「一人っ子政策」が新たな局面に入った。新法「人口・計画出産法」の内容とは――。中国人口問題の第一人者が、最新の調査に基づいて「人口超大国」の現状を分析する。 九月一日施行の「人口・計画出産法」によって中国の計画出産、いわゆる「一人っ子政策」が法制化された。これまでは詳細は地方条例によっていたのだが、今回これが国の「法」として正式に定められたのである。 中国の「一人っ子政策」は、一九七九年、毛沢東の提唱したそれまでの「人口資本説」を大転換し、厳しい賞罰制度を設けて始められた。開始以来、この政策は、人権論の視点から広範な批判を浴び続けてきた。しかしながら、世界最大の人口を有する中国は、世界的な人口爆発を少しでも緩和することに自国が責任を負っているという認識のもと、「一人っ子政策」によって世界的な貢献をしていると主張してきた。さらに、あれだけの広大な国土を有しながらも、実際に農地や居住地として使用できる土地はさほど広大ではなく、国土の砂漠化も進む一方で、それに伴い農業生産性は低下し、食物自給率も低下するなどの状況が限界まできていることを考えると、やはり他に選択肢はなかったといえる。

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