日本の「モノづくり」は死なず

執筆者:梅田望夫2002年11月号

「私がモノに魅力を抱き続けている理由は何だろうと最近よく考えます。やはりモノの向こうにそれを作った人々が存在し、その人々の思い、挑戦、技、創造、使い手に対する配慮が、モノを通して語りかけてくるからでしょう。言語を思い切り広義にとらえるならば、モノの存在は言語の一部です。あるモノを真ん中に置いて、そのモノに関わった人とニヤニヤしながら一緒に酒を飲めば、いきなり旧知の間柄以上の関係になれる。至福感が訪れます」「日本のモノづくりはそう簡単に死にません。日本人の美点は明確です。根気よく一つのことを代々続けていける能力。誰かが築いた土台の上であっても、その山を少しでも高くして後世に伝えることを是とする感覚。つまりおそろしく長い期間をかけてモノを育てていけること。この美点は日本に十分残っている。自信喪失する必要はないのです」「モノへの愛」をこう語る渡辺誠一郎さん(五一)は、日立メディコ、インテルを経て、一九九七年、シリコンバレーでニューコアテクノロジー(www.nucore.co.jp)という半導体(画像処理チップ)ベンチャーを創業した。創業以来、三回に分けて計三千二百万ドルを調達。シリコンバレーに四十二人、日本に十二人という陣容で、二〇〇五年の株式公開(IPO)を目指している。

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