迷走を繰り返し膠着状態に陥った税制論議は、内閣改造で最後は小泉首相の決断次第となった。首相の思惑通りの展開だが、自ら唱えた「あるべき税制」は未だ見えていない。 小泉改造内閣の顔ぶれは、政府税制調査会(首相の諮問機関)関係者に少なからぬショックを与えたはずだ。不良債権問題の対応策で、金融機関への公的資金注入を巡って柳澤伯夫前金融相と真っ向から対立してきた竹中平蔵・経済財政相が、事前の予想を裏切って金融相を兼務することになった。小泉純一郎首相は政治家である柳澤氏を更迭してまで、公的資金注入に積極的な民間人の竹中氏に金融行政も任せ、経済政策運営上の強力な権限を与えた。このことは、実は小泉首相が提唱する税制の抜本改革の行方にも大きな影響を与えるとみられ、税制改正に携わる者の心中は穏やかでない。 税制の抜本改革論議は現在、政府税調と経済財政諮問会議の民間議員の意見が対立したまま、膠着状態が続いている。経済財政諮問会議を担当する竹中氏は民間議員とほぼ同じ考えを持っており、今回の内閣改造人事を見て「小泉首相は税制改革でも竹中氏の主張しか聞かないのでは」との観測が広がっている。「シャウプ税制以来の抜本的な税制改革」を謳い文句に始まった今回の税制改革論議だが、発端は二〇〇一年末に小泉首相が経済財政諮問会議で「あるべき税制の姿、これをやらないと日本の構造改革、経済再生はできない」と発言したところにある。例年は秋口から議論を始め、年末に翌年度の税制改革について答申する政府税調は、この首相の指示を受けて今年初めから議論をスタートした。

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