国際紛争のメディア化

執筆者:高木徹2002年11月号

「タリバンがバーミヤン大仏を破壊して私も喜びましたよ。イスラム教徒として当然のことです」 アラブ首長国連邦のテレビ局、アブダビテレビのイスラマバード特派員でパレスチナ人のジャマール・イスマイルは、そう言い放った。文化遺産破壊の暴挙とされたタリバンの政策を支持するその言葉は、衛星を通じ世界に発信を始めたこのテレビ局を支えるジャーナリストの価値観が、従来の欧米ジャーナリズムとは違うことを端的に表している。 今、こうしたアラブ系衛星テレビ局が急成長している。代表選手は、9.11以降有名になったカタール発の二十四時間ニュース局アル・ジャジーラ(一九九六年設立)だ。首都ドーハのはずれにある本部を訪ねると、周囲ののんびりした空気とはうってかわった雰囲気に圧倒される。完全にデジタル化された編集機でつながれた映像はテープを介さずそのまま送出され、世界中からペーパーレスで送り込まれた原稿は、コンピューター上でのチェックを経てスタジオのアナウンサーに送られる。スタッフは、エジプト、シリア、モロッコ、イラク人まで含めたアラブ世界のドリームチームだ。最優秀の人材が世界各地に飛び、「ビン・ラディンのビデオ」をはじめとするニュースを発信している。

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