モスクワで発生したチェチェン独立派武装グループによる劇場占拠事件で、日本でも「百万本のバラ」で知られるロシア・ポップス界の女王、アラ・プガチョワさんが、人質解放交渉を水面下で行なっていたことが明らかになった。 事件の舞台となった「文化宮殿劇場」の二階にあるナイトクラブの経営者はチェチェン人で、プガチョワさんの娘とかつて結婚していた。このチェチェン人は麻薬の密売で稼いだ金をこの娘につぎ込んで歌手としてデビューさせたほか、今回のチェチェン武装グループの活動を支援していたという。 事件発生後、膠着状態が続くなかでロシア当局は、チェチェン武装グループとの“縁”があるプガチョワさんを極秘裏に担ぎ出し、無線や電話を通じて、投降及び人質解放に向けた説得を試みた。 最終的には、プガチョワさんの説得工作は不調に終わり、特殊部隊による強行突入と特殊ガスの使用で、人質に百人を超える犠牲者を出しながらも決着したが、「ロシア歌謡界の大スターとチェチェンとの関係は公表するわけにはいかず、彼女による説得工作は完全な国家機密として遂行された」という。

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