クアラルンプールでの日朝国交正常化交渉は「核」と「拉致」で不調に終わったが、両国は裏ルートで関係調整を図っているもようだ。この裏ルートは、外務省の田中均アジア大洋州局長と平松賢司北東アジア課長が担当。北京などで接触したり、ファクスでやりとりし、日朝首脳会談開催や日朝平壌宣言の起草、五人の拉致被害者の一時帰国などを実現させた。 北朝鮮側の交渉相手が誰かは極秘だが、金正日総書記の側近とされる太栄哲社会科学院院長とする説がある。また、田中局長の京都・洛陽高校時代の同級生で、北朝鮮に帰化し、現在労働党中央委員を務める人物だという情報もある。「約束は必ず守り、信頼の置ける人物」とされ、金総書記と直接のパイプを持っている。 水面下の交渉でこの人物は、「田中さんは失敗しても更迭されるだけだが、わたしは自決用の弾を込めている」と田中局長にピストルを見せたこともあるという。 田中局長については、拉致被害者リストの隠匿などで拉致被害者家族や国会議員からの風当たりが強いが、政府が悪評高い田中局長を切れない理由も、この裏ルートを持つからだという。

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