ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが今年五月に自宅軟禁を解除されてから半年。だが、民主化に向けた政治対話再開の見通しは未だ立っていない。軍政当局は、これまでに閣僚が十三回、連絡将校が百七回、スー・チーさんと面会したと公表しているが、いずれも軟禁解除前の予備交渉段階の話で、解放後に双方が接触したのはわずか一回だけとされる。 スー・チーさんは毎朝四時に起床、一日二回の瞑想を欠かさず、表向きは冷静さを保っている。ただ、解放直後は外国メディアの電話インタビューなどに応じていたが、最近は一切拒否。「アピールできる成果がなく、焦り始めている」(ヤンゴンの消息筋)という。 このほどミャンマーを訪問したピネイロ国連人権委員会特別報告官は、「ブラジルの軍政から民政への移管と同じように、時間がかかる」と出身国の例を挙げて語った。軍政側に対話の早期再開を迫るべく、十一月十二日にはラザリ国連事務総長特使も訪問。しかし、国際社会は目下、テロ警戒と米軍のイラク攻撃時期に関心を集中させており、スー・チーさんへの援護射撃は強まりそうにない。

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