東京証券取引所が将来の株式上場に向けアドバイスを受ける「上場準備アドバイザー」に野村証券を選んだことが、兜町の大ブーイングを集めている。野村の氏家純一社長は東証の社外取締役。ある企業の取締役が経営する別の企業に業務を発注することは、商法が厳しく制限している「自己取引」に当たるからだ。このケースで言えば、東証の利益を無視して野村が儲かるような契約が結ばれかねない恐れがある。 ただし、この自己取引は取締役会という最高意思決定機関で契約を決めれば、法律上は何とか“セーフ”。東証の土田正顕社長は九月中旬の会見で、「確かに一種の自己取引だから野村の選定は取締役会で決めた。その時には氏家さんには席を外してもらったから問題ない」との説明を行なった。 それでは収まらないのがアドバイザー選びで落選した外資勢。「法的にはクリアできても、上場企業の模範たるべき取引所なら倫理的にアウトでしょう」と憤懣やるかたない。折しも東証は、企業倫理や順法精神の観点からも上場各社を監視する制度づくりに着手したばかりだが、“警察官役”にはスタートからミソがついた格好だ。

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