いつまで続く日銀の「連戦連敗ゲーム」

執筆者:石本量司2002年12月号

ゼロ金利に踏み切り、量的緩和を導入し、株式の買い取りまで決めたのに、それでも政府の無策のツケは「世知に乏しい秀才集団」日銀に回ってくる。インフレターゲットの導入はもはや時間の問題でしかない。 政府と中央銀行の関係は通常、「ゲーム理論」を使うと説明しやすい。映画「ビューティフル・マインド」の主人公で米数学者ジョン・ナッシュが、ノーベル経済学賞をもらったあの理論だ。 お互いに裏切る動機がある二人のプレーヤーが、自らの損得を合理的に追求する中で、協調するのか、裏切り合うのか。両者の行動の組み合わせによって“囚人のジレンマ”や“ナッシュ均衡”などと呼ばれる状況が発生する。ざっくり言うと、お互いに合理的に行動したのに最悪の状態になるのが前者、お互い動くと損をするから膠着状態になるのが後者といったところか。 ところが日本は、ある外資系証券のエコノミストによれば「どちらにも当てはまらない」という。日銀が一方的に譲歩し、政府は何もしないからだ。つまり、“プレーヤーは自らの損得勘定に合理的である”とのゲーム理論の前提が、日本では成り立っていないのである。 確かに日銀は金融緩和をやり続けている。ゼロ金利、量的緩和、挙句の果てには中央銀行にとっては禁じ手の銀行保有株式の買い取りまで決めた。ところがこの間、政府はほとんど何もしていない。小泉純一郎首相の改革路線は色あせ、期待された竹中平蔵金融・経済財政担当相の不良債権処理の加速策も、大手銀行や自民党などの猛反発で骨抜きになった。

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