最も多くの人たちが、最も強い関心を持ち、それでいて最も気軽に利用している情報。それが、天気予報(気象情報)だ。今や、新聞やテレビだけでなく衛星放送の専門チャンネル、民間気象情報会社のホームページ、携帯電話等々により気象情報はいつでも、どこででも入手できるようになった。 気象情報はまた、産業情報としても利用され、その価値を増している。昔から交通機関の運航管理や農作物の育成管理、電力会社の保安管理などに利用されてきたが、最近ではコンビニエンスストアの商品仕入れ管理、イベント開催時の進行管理等々にも利用が広まり、さらには異常気象や天候不順に備えて収益の落ち込みを補う「天候デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品も登場している。 気象情報を活用して天候変化に伴うリスクを軽減できるようになったのには、二つの理由がある。緻密な観測システムを持つ気象庁の観測データのすべてが開示されたことと、開示データがデジタル情報で提供されていることだ。民間の気象情報会社などはデジタル情報なのでデータを自由に加工でき、顧客ニーズに沿ったきめの細かい情報を提供できる。 気象情報を、これほど自由に活用できるまでになったのには、多くの気象関係者の努力があったが、なかでも元気象庁長官・立平良三の存在を抜きに語ることはできない。

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