「銀行・証券共倒れ」時代の野村証券の野心

執筆者:川原吉史2003年1月号

東京三菱銀行が“九・一一”でご破算になったモルガン・スタンレーとの提携を再び模索しているという。成果の挙がらぬ再編は、青写真の描き直しが不可欠だ。銀行、証券入り乱れてのサバイバル戦争――。 歴史には「たら」「れば」は禁物であるが、こう考えてみたくなる。「もしも二〇〇一年九月十一日の米同時テロがなかったら……」 世界の金融地図はきっと大きく変わっていたに違いない。     * 二〇〇一年十一月。米ウォールストリート・ジャーナル紙に興味深い記事が載った。米投資銀行のリーマン・ブラザーズとラザードが合併交渉を進めていたが、テロで「ご破算」になったというのだ。 ウォール街の名門、ラザードは収益の柱であるM&A(企業の合併・買収)業務の地盤沈下が著しく、長期低落傾向に歯止めをかけようとリーマンに救いを求めた。 リーマンはこの話に興味を持った。欧州に強い基盤を持つラザードと合併すれば、一歩も二歩も先を行くゴールドマン・サックスに追いつくことができるかもしれないからだ。 テロ前日の九月十日にはラザード側がリーマンの幹部に対して合併効果を説明。九月後半にはさらに突っ込んだ話し合いが予定されていた。が、テロですべてが無に帰したとウォールストリート・ジャーナルは記している。

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