米国によるイラク攻撃が現実味を帯びる中、防衛庁はマラッカ海峡を通過する民間船舶の護衛に海上自衛隊の護衛艦を派遣する方向で検討を開始した。イラク攻撃がテロを誘発しかねないとみての措置で、派遣には海上警備行動の発動が必要になるという。 マラッカ海峡は、シンガポール海峡からタイ・マレーシア国境付近まで約一千キロに及び、日本向けの原油の八〇%はここを経由して運ばれている。が、問題は「海賊銀座」と呼ばれる危険水域であること。 防衛庁は、米国のイラク攻撃を機にアル・カエダによるテロが発生する可能性があると分析。なかでもマラッカ海峡では、イエメン沖でフランスのタンカーが体当たりを受けたような高速船による“特攻”がありうるとみている。また、湾岸戦争時のように国内論議でもたつくうちにイラク攻撃が終われば、米国から莫大な戦後復興資金の提供を求められる可能性もあり、「人的貢献の方が安上がり」(防衛庁幹部)との計算も働く。 ただ、マラッカ海峡は政府が自衛権を行使できるとしてきた「シーレーン防衛」の一千カイリを超えるため、海上警備行動の発動には紆余曲折がありそうだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。