欧州連合(EU)をモデルに、南米全域で一つの経済共同体を立ち上げようという野心的試みが、先送りされることになった。それぞれが経済混乱や政治対立など「お家の事情」を抱え、とても統合を進められる状況ではないというのが実情のようだ。 ブラジルが提唱する構想は、同国やアルゼンチンなどによるメルコスル(南米南部共同市場)を強化し、これにペルーなどアンデス共同体を引き込もうというもの。実現すれば、十カ国で総人口三億四千万人の一大経済ブロックが誕生することになる。 背景にあるのは、キューバを除く西半球の全三十四カ国が二〇〇五年の発足を目指す米州自由貿易地域(FTAA)構想だという。貿易自由化をリードする米国の「独り勝ち」を警戒するブラジルは、南米統合を先行させることでFTAA設立交渉での主導権確保を狙ったわけだ。 ところが、各国とも通貨急落や不況に見舞われ、統合第一段階であるインフレ抑制と財政赤字削減の共通目標を達成したのは、準加盟を含むメルコスル六カ国でチリだけ。アンデス共同体との貿易協定も仕切り直しが決定している。 結局、十二月に開かれた六カ国の首脳会談で合意に至ったのは、域内での永住ビザ発給の簡素化だけ。成果はお寒いものに終わってしまった。

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