コンピュータの中で眠っていた男

執筆者:成毛眞2003年1月号

 忘年会、新年会のシーズンである。僕のいたソフトウェア業界は平均年齢が若いからか、じつに派手な忘年会をしていた。派手といってもゴージャスという意味ではない。すこしお金のかかった学生コンパという意味合いだ。 十五年近く前の納会のことだ。午後四時くらいから社内で酒盛りが始まり、数時間後には自席でビールや氷のぶっ掛けあいという始末。プロ野球日本シリーズの優勝チームのようなノリである。 ビニールシートで保護してあったものの、商売道具のパソコンは水浸し。気がついてみれば、数十台が作動不能である。宴会はさらにエスカレートし、中国の取引先からいただいた老酒の四斗樽をひっくり返したからたまらない。老酒はフリーアクセスのフロアに染み込み、LANの回線をショートさせ、その臭気は正月明けにフロアを総入れ替えするまでおさまらなかった。 当然、こうなると泥酔し寝込むものも出てくる。長髪の社員はハサミで髪を切られ、その証拠の髪をコピーしてファクスで他の事業部に送るといった事業部対抗髪切り大会へとエスカレートした。気の弱いものは避難するしかない。翌朝、大型コンピュータの中でいびきをかいている「気の弱い猛者」がいたことには驚いた。

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