バフェット哲学という“強者の論理”

執筆者:田村洋佑2003年2月号

「自分が理解できる企業を長期保有を前提に買う」そんな投資哲学で米国株バブル崩壊の混乱を難なく乗り切ったウォーレン・バフェット氏。アメリカでは株式市場の良心を体現する大物投資家として有名だが、大西洋を渡ったイギリスでは保険業界の辣腕ディール・メーカーとして名を馳せる。「バフェットとメドニックが組む!」。二〇〇二年冬、バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが、英国に本社を置く世界最大の航空保険会社グローバル・エアロスペース・アンダーライティング・マネジャーズ(GAUM)に四割の資本参加を発表した際、英ロンドンの保険関係者には大きな衝撃が走った。 GAUM社長のトニー・メドニック氏は、彼が首を縦にふらない限り日本や欧米の航空保険料が決まらないと言われる業界の首領。米英二人の大物が組む影響と狙いをどう見るべきか。バークシャー・ハザウェイの実像を検証することから始めよう。 バークシャーは二〇〇二年、企業の買収や資本参加に約四十億ドルを投じた。二〇〇一年の四十九億ドルに比べれば減少したものの、依然として高水準を保っている。バフェット流M&A(合併・買収)の大きな特徴は、ほぼすべて現金で賄われている点だ。株式交換方式によるM&Aが幅を利かせた九〇年代も一貫して現金方式を貫いてきた。

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