米国の「同盟管理」は金正日を抑止できるか

執筆者:西村陽一2003年2月号

北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言した。「有効な軍事オプションをもたない」米国に、打つ手はあるのか。米朝が互いのシグナルを読み違えれば、事態は危険水域に突入する。[ワシントン発]「わたしは金正日が嫌いだ。この男のことを考えると、はらわたが煮えくりかえる」――ブッシュ大統領が昨年八月、休暇先のテキサス州クロフォードの農場で、『ワシントン・ポスト』紙のボブ・ウッドワード記者を前に大声で語った言葉だ。 大統領は北朝鮮の強制収容所の衛星写真を見たことがある。亡命者の証言に基づいて場所が特定された巨大な収容所のひとつだ。大統領はそこでの拷問や飢餓などの実態をめぐり、情報当局者から詳細なブリーフィングも受けた。その記憶がよみがえったのだろう。大統領は続けた。「収容所の写真を見た。彼(金総書記)はこれを使って家族を引き裂き、人々を拷問している。ぞっとしたものだ」。 正月の休暇先にもなったクロフォードで、記者団からこの発言について改めて問われた大統領は、「金正日は国民を飢えさせている。自国民を飢えさせる者には同情しない」と言い放った。 独裁、圧制、人権の抑圧、国民の飢え、大量破壊兵器の開発、米国に対する敵意。インタビューであれ、外国の指導者との会談であれ、「グッドガイ(いい奴)」「バッドガイ(悪い奴)」という割り切った表現で個人的な好悪の感情をあらわにすることの多いブッシュ大統領にとって、北朝鮮の金総書記体制には嫌悪すべきありとあらゆる要素が揃っている。その点では、イラクのフセイン政権とまったく同じだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。