中国が「北」の暴走を止められない理由

執筆者:伊藤正2003年2月号

中国にとって北朝鮮は、「血で結ばれた仲」から「厄介な弟分」に変わった。国際社会の視線を中国も強く意識するようになった今、北の不法行為を見て見ぬふりすることは不可能だが、しかし、北を大きく変えるほどの影響力は、もはや中国にはない……。[北京発]昨年秋、中国当局に通じている友人から電話があり、拙文を読んだと言った。「テロ国家育てた『過保護』」という見出しの評論(十月十三日付「産経新聞」朝刊)で、ラングーン事件や大韓航空機事件などの対韓テロから、麻薬密輸、外国人拉致まで、北朝鮮の国家犯罪を見て見ぬふりをし、北を擁護さえしてきた中国を批判した文章だった。例によって嫌味でも言うつもりだなと構えたら、そうではなかった。「関係者の間で評判になっている。お説の通りだ、とね。ただ、結論部分については同意できないという当局者もいる。現在の対北政策は大きく変わっていると」 拙文は、朝鮮戦争以来の中朝の「血で結ばれた兄弟関係」の虚実を紹介した後、「中国の『弟』への過保護が、テロ国家を育成したとの反省はどこからも聞こえない」と結んでいる。自分の非を認めることのない民族性だから、一部の当局者は「反省」という表現にカチンときたに違いない。政策を変えれば、それでいいではないか、というわけだ。

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