核開発は「脅し」ではない

執筆者:武貞秀士2003年2月号

北朝鮮の外交にブラフはつきものだ。しかし、世界をあきれさせた核兵器開発の再開と核拡散防止条約からの脱退は、本当にブラフに過ぎないのだろうか。北朝鮮研究の第一人者が精緻に分析する。 昨年十一月末、ワシントンのハドソン研究所で講演する機会があった。北朝鮮の核開発問題をどう考え、日本はどう対処すべきかについて二十分ほどの報告をしたが、いつもは二、三十名程度が出席する会に、学者、実務者、日韓の外交官ら七十名以上が集まり、ワシントンの専門家が北朝鮮の核問題をいかに深刻に考えているかがわかった。冒頭で「今日、これだけの方々が集まったのは、私ではなく金正日総書記が有名だからです」と冗談をいっても参加者は真剣で、乗ってこない。北東アジアが再び危機を迎えていることが会場の雰囲気からもわかった。 金正日は世界の注目を引くために、瀬戸際外交をしているだけなのか。それとも別に軍事的狙いがあるのか。ここが大事になってきた。北朝鮮の動きが単なる外交パフォーマンスであるなら、こちらは支援と警告を組み合わせて交渉すれば、北朝鮮がどこかの時点で交渉から得る「チャンス」に食いついてきて、事態打開の糸口が見えてくるはずである。

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