限界を追求する人間には、国境はない――東芝、ヒューレット・パッカード、テキサス・インスツルメンツ、スタンフォード大学で、テクノロジーの最先端をリードし、日米の企業・大学から注目される西義雄教授の生き方とメッセージに、日本の技術者の未来を見る。 物腰がとても柔らかく、誰にでも丁寧に接し、語り口の穏やかな人である。それでいて、発せられる言葉は「decisive tone」(断固たる口調)で一貫し、風貌と内面のコントラストの鮮やかさは、会う者に強い印象を残す。 スタンフォード大学教授・西義雄。半導体産業に多大な貢献のあった個人に贈られるIEEE(米国電気電子技術者協会)ロバート・N・ノイス・メダルの二〇〇二年度受賞者でもある。東芝、ヒューレット・パッカード(HP)研究所長、テキサス・インスツルメンツ(TI)上席副社長を経て、二〇〇二年五月、スタンフォード大学に招聘された。現在はTIのチーフ・サイエンティストとの兼務でカリフォルニアとテキサスを往復する多忙な毎日を送っている。シリコンバレーに住む日本人の中で、最も創造的な仕事に携わっている人と言って間違いない。ロバート・ノイス賞までの軌跡「私は一九六二年の卒業ですが、金属工学が専門だったので大学時代の同級生は皆、八幡製鉄か富士製鉄へ行きました。私は好奇心旺盛だったので半導体がやりたくて東芝に入りました。半導体がまだ若々しい産業だった頃です。教科書も三冊しかなかった。世界そのものを自分が作っていくという時代でした」

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