「米国型」からの脱却を探る欧州の企業統治

執筆者:石山新平2003年2月号

会長を兼務するCEOの独裁、社外取締役の機能不全など、米国型企業統治の弊害の是正に欧州が乗り出した。機関投資家から注がれる視線もその動きを後押しする。日本企業はこの流れをどう受け止めるのか。 企業経営者の暴走をどう防ぎ、市場の信頼を取り戻していくか。米エネルギー大手エンロンや通信大手ワールドコムの破綻など企業の不正に揺れた昨年の反省を、二〇〇三年は具体的な形にしていくことが求められるだろう。経営者に暴走を許さない仕組み、つまりコーポレート・ガバナンス(企業統治)のあり方をどう再構築するのかが、個々の企業に問われる年になるに違いない。 強力なCEO(最高経営責任者)に経営を委ねる米国型のガバナンス・システムの欠陥が鮮明になった今、新たなモデルは生まれるのか。米国型を否定し「日本流」への回帰を喧伝する向きもある。だがどうやらコーポレート・ガバナンスの新しいモデルは、経営者と資本家、従業員などが経営に共同参画する伝統を持つ欧州にありそうなのだ。暴走した会長兼CEOたち スイスに本拠を置く国際的な総合金融機関クレディ・スイス・グループ。二〇〇二年十二月いっぱいでルーカス・ミューレマン氏が会長兼CEOのポストを正式に去った。二〇〇一年秋に破綻したスイス航空の社外取締役を務めていたことや、同じく社外取締役だった南米の銀行で経営幹部による不正送金疑惑が生じるなど、ここ一年のミューレマン氏は不祥事続き。マッキンゼー時代からの腹心に運営を任せた傘下のウインタートウル保険の業績悪化でグループ全体が巨額の赤字に陥り、ついに命運が尽きた。取締役会会長とCEOを兼ね、グループ運営の全権を握ってきたミューレマン氏への批判は強く、辞任にあたっても退職金返上に追い込まれた。

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