台湾(上)上海を渡った日本語

執筆者:水木楊2003年2月号

 日本語は日本人だけのものではない。また、あってはならない。この十数年、日本語を話す外国人の数は確実に増えた。日本語を学べば、日本文化をより深く知ることができるのは間違いない。彼らは私たち日本人が思ってもみなかった角度から、日本文化に新しい解釈の光を当ててくれもするだろう。 人口比にすると、日本語を話す人たちが世界で最も多いのは台湾である。その数は少なく見積もっても二百万人。一説には、ここ十年で五百万人になったともいわれる。台湾の人口は約二千二百万人だから、二百万人としても十人に一人。人口十三億人の中国に当てはめるなら、一億三千万人が日本語を話す計算になる。日本一カ国以上の人数になる。かつての植民地時代に日本語教育を受けた世代、日本を相手に商売するビジネスマンに加え、この十数年来台湾では日本のテレビ番組や雑誌の人気が高く、若い世代にも日本語が広まった。台湾に根付いた日本語をテーマに、今回と次回にわたって「未来史の現場」をお伝えする。街に溢れかえる“ニッポン” 台北市内にある二十四時間営業の大規模な書店を覗いてみた。語学関係の書籍の中で圧倒的多数を誇るのは英語だが、二番目は日本語。フランス語、スペイン語、ドイツ語などを書籍数ではるかに引き離している。『貿易日語』『商用日語』『社交日語』などのほかに、『日語新聞瞬間記憶法』『桃太郎的法則』『日本通』『J' STUDY 日本語がもっと近くなる』など、日本人でも思わず手を伸ばしたくなるような書籍も並んでいる。

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