アメリカが迫られる「三つの脅威」への対応

執筆者:田中明彦2003年2月号

 イラクでの査察が開始され、大量の申告書が国連に運び込まれた。その結果、イラク情勢は今のところ、書類の精査と今後の査察の成り行きに注目せざるをえないという局面が続いている。依然として、イラクに対する戦争の現実味が突然高まることはありうる。 このような中、北朝鮮は、十二月号で懸念したような危険な瀬戸際戦略への道を歩み始めた。枠組み合意に基づく重油の提供が見込めない中、寧辺の核施設を再稼働させると通知、IAEA(国際原子力機関)による封印や監視カメラを撤去し、査察官を追放した。昨年末から年始にかけての国際論壇の多くは、このような北朝鮮問題に関心が集中した。テロとの戦争を続けるなかで、イラクと北朝鮮という二つの重大問題に直面した世界は、近年になく複雑さに取り囲まれた新年となった。対北朝鮮「武力攻撃」論は少数 ブッシュ大統領にとっての問題は深刻である。『エコノミスト』誌社説がいうように、二つの問題が生まれている。第一は、ブッシュ大統領を「弱々しく」みせる恐れが存在するからである。これまでの「先制行動」についての議論にもかかわらず、ブッシュ大統領は、「今のところ北朝鮮については、武力でなく、外交で解決したいと語っている」からである。さらに第二に、これによって彼の発言は一貫していないとみられる危険もある。「イラクについても外交的解決を求めていると彼はいっている」が、いざとなればイラク攻撃に踏み切る態勢が整っていることは明白だからである。二重基準ではないかというわけだ。

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