トニー・ブレアの道

執筆者:名越健郎2003年2月号

 社会民主主義でも自由主義でもない「第三の道」を掲げ、スマートな風貌や巧みな話術で飛ぶ鳥を落とす勢いだったトニー・ブレア英首相の評価が低落している。経済的な苦境で「第三の道」は「第三世界への道」(保守党幹部)と皮肉られた。パワフルな弁護士、シェリー夫人のマンション購入で不正があったとする疑惑も、大衆紙で連日報じられている。 イラク問題では、国内でも反戦論が強いのに、ブッシュ米大統領に常に同調するパフォーマンスが、国内や他の欧州首脳の不評を買い、欧州連合(EU)のはみ出し者扱いされ始めた。 ブッシュ大統領とブレア首相が首脳会談を行なったあと、共同記者会見に臨んだ。 司会者が両首脳を紹介した。「左がブッシュ大統領、右は大統領の通訳です」 米英首脳会談を報じる新聞が、写真のキャプションをこう付けた。「左がブッシュ大統領、右は大統領の愛犬」 ブレア首相に記者団が質問した。「イラクが提出した大量破壊兵器開発の申告書をどう評価しますか」 首相は慌てて側近を呼び、小声で尋ねた。「ブッシュ大統領はそれについて、どうコメントしたのか」 英議会でイラク攻撃反対派議員がブレア首相に詰め寄った。「オサマ・ビン・ラディンがまだ生きているのに、なぜサダム・フセインを先につぶす必要があるのか」

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