IAEA 国際原子力機関

執筆者:庄木敦信2003年3月号

イラク、北朝鮮の核疑惑の渦中で注目されている国際機関IAEA。1957年、バラ色の原子力産業を思い描いて設立されてから半世紀、“核の番犬”の異名を取る組織の役割と限界とは―― ギリシャ神話のプロメテウスが盗んだ「天の火」が核エネルギーだとするなら、国際原子力機関(IAEA)とはさしずめ、最高神ゼウスから下される罰を何とか免れ、禁断の火の利益を最大限、享受しようとして作られた世界組織ということになる。一九五七年、米大統領アイゼンハワーの国連総会演説「平和のための原子力」を具体化するため、国連の独立機関として設立されたIAEAは、核不拡散の守護者である半面、原発・核技術の普及を促進する二つの顔を併せ持つ。核時代を生きることの試練は厳しさを増し、IAEAに重くのし掛かっている。 ドナウ東岸に位置するウィーンの国連都市。その反り返った屏風状の高層ビルにIAEA事務局は置かれている。加盟国は百三十四カ国、職員は約二千二百人に上る。日本人職員も四十人ほど勤務している。核物質の軍事転用を封じ込める保障措置(核物質の検証・査察)を扱う保障措置局、八六年のチェルノブイリ原発事故を引き金に吹き荒れる原発不信の逆風の中で、安全強化に腐心している原子力安全局、原発プロジェクトを側面支援する原子力局、医療・農業分野への核技術転用を研究する原子力科学応用局など六局を擁し、局ごとにモハメド・エルバラダイ事務局長(エジプト人)を補佐する六人の事務次長が配されている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。