社会の発展が伴わなければ、不満だけが膨張していく恐れがある。 とめどなく増えるように見えるイスラム教徒(ムスリム)の人口。「文明の衝突」の原因となるかどうかはともかく、百二十―百三十億人といわれる「地球の人口収容能力」の限界を考える上でも、重要なファクターとなってきた。 一九〇〇年に二億人弱(世界人口の一二・三%)だったムスリム人口は、一九五〇年には三億人強(同一三・六%)、二〇〇〇年には約十二億人を数えるまでになった。キリスト教徒にはまだ及ばないが、いまや世界人口の五人に一人がムスリムである。 早稲田大学・店田廣文教授の詳細な推計によれば、二〇五〇年のムスリム人口は二〇〇〇年の二倍以上、約二十六億人に達する。この時点での世界人口は九十三億人と推計されるので、ムスリムの比率は二八%にまで高まる。 急カーブの人口増加の基盤となっているのは、もちろんイスラム諸国の保健・衛生状態の改善や医療制度の整備などだ。特に、ペルシャ湾岸の産油国は、潤沢な石油収入をもとに、病院など社会基盤を急速に充実させた。 加えて、イスラム社会の伝統的な家族観も作用している。先進国では核家族化と少子化が比例して進んできた。中東などのイスラム社会でも核家族化は進行しつつあるが、親と子、兄弟など、それぞれの核家族の間の繋がりは、先進国よりはるかに強い。

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