「河野」の名も浮かぶ人材飢饉

執筆者:2003年3月号

 アメリカはイラクへ攻め込む前から、ポスト・サダム・フセインの政権づくりを考えている。それを手本としたわけでもあるまいが、自民党ではポスト小泉をめぐる議論が公然と行なわれている。「そんなことになったら、おれの肝臓を返せという」。小泉純一郎を引きずり降ろしたいが、代わる人物がいない、のが悩みの権力集団橋本派からは、河野洋平の名前まで挙がっている。肝臓を返せ、といっているのは生体肝移植で肝臓の一部を提供し父親を救った代議士の河野太郎だ。かねて父親に世代交代をすすめてきた。手術が成功し、洋平は健康を取り戻した。 洋平は「お前はおれがいたから生まれたんじゃないか。だからお前の肝臓はもともとおれのもの」と混ぜっ返すほど元気だ。自民党総裁に就任しながら、ただ一人内閣総理大臣にならなかった人物だが、健康を害したことから、一時は政界での存在感がほとんどなくなっていた。 ポスト小泉。麻生太郎、平沼赳夫、高村正彦、安倍晋三、堀内光雄。いずれも小泉に比べてインパクトに欠ける。亀井静香や古賀誠はインパクトはあるが、絵に描いたような抵抗勢力で、世論の反発は避けられない。 それにしても、と思う。なぜ日本の政界はこれほどの人材飢饉が続くのか。どうしても福沢諭吉の指摘がちらつく。「文明論之概略」、このコラムの題の「異端妄説」もそこから借用したものだが、その中でこう書いている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。