インドとシンガポールが経済面で急接近している。シンガポールのゴー・チョクトン首相が四月に訪印、バジパイ首相との首脳会談では自由貿易協定(FTA)交渉スタートで合意する見通しだ。 華人国家のシンガポールは中国との関係強化に取り組む一方で、インドとのパイプ作りも着々と進めてきた。政府は昨年十月に「ネットワーク・インディア」を立ち上げ、対印投資に関心の高い民間企業を組織化。政府系企業ではシンガポール・テレコムがインドのパーティ・テレコムに出資し、昨年四月には両国を結ぶ海底通信ケーブル網「i2i」を完成させた。バンガロールではシンガポール主導でIT工業団地も開発した。 期待は成長の可能性を秘めたインドの市場規模。シンガポールの人口の一割近くをインド系が占めていることも背景にある。 インド側には、中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)とのFTA交渉で華々しい成果をあげつつあることへの焦りがある。昨年十一月にカンボジアで開かれたASEAN首脳会議では初の印―ASEAN首脳会議にこぎつけたが、十年以内のFTA合意を目指す中国との開きは大きい。シンガポールとの関係強化により東南アジア経済外交で巻き返したいとの思惑があるようだ。

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