[デトロイト発]毎年一月に開かれるデトロイト・モーターショーを訪れれば誰でも目にするのが、自動車メーカーのトップが自社商品をアピールするため役者顔負けの演技を披露する光景だ。なかでも米国の自動車産業の聖地であるデトロイトのモーターショーでは、ビッグ3(米三大自動車メーカー)のトップは毎日のように大舞台を用意され主役を熱演する。 ただし、今年の主演男優賞は日産自動車のカルロス・ゴーン社長だろう。大音響のロック音楽につつまれてトラックの荷台に仁王立ちしたゴーン社長は、両手の拳を天高く突き上げ、まるで優勝者のようにステージに姿を現した。ゴーン社長が勇ましく登場するのも当然かもしれない。日本勢初の大型ピックアップトラック「タイタン」を、今年末にも米国市場で販売することを高らかに謳いあげたのだ。 トラックは米国市場の本丸。ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ダイムラークライスラーのクライスラー部門、つまりビッグ3が二〇〇二年に販売した新車の合計約千六十八万台のうち、トラックは六四%超を占める。米国メディアはゴーン社長の狼煙を日本車メーカーのビッグ3に対する宣戦布告と受け取った。新聞各紙は一斉に「米国の自動車市場に揺さぶり」「ビッグ3に火を放った」などと、興奮気味に報道した。

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