「独仏の接近」はイラク攻撃を止めるか

執筆者:田中明彦2003年3月号

 イラクでの査察についての報告が国連安全保障理事会で行なわれ、それに引き続いて、ブッシュ米大統領の一般教書演説があった。二月五日には、安全保障理事会でパウエル米国務長官からイラクの査察協力についての報告があり、イラク査察問題は、いよいよ最終局面に向かいつつある。新たな決議が作成されるか。サダム・フセインは、どのような反応を示すのか。武力行使が行なわれるとすれば、いつか。これらの疑問は、数週間のうちに明らかになるのであろう。 国際論壇は、いうまでもなく、このイラク問題が他を圧している。ただし、武力攻撃の可否などや、その論理については、論点はおおむね出尽くした観がある。この一カ月で目立った論点は、アメリカとヨーロッパの関係であった。本稿ではこの問題を中心に検討してみよう。高まる「左派知識人」の声 まずヨーロッパといっても、最も反米的な見方をしているのは大陸ヨーロッパにおける「知識人」であろうと言われる。この点は、過去の日本における進歩的知識人のあり方を知っている日本人にはそれほど理解は困難ではない。ただしヨーロッパのほうが、現在の日本よりも進歩的知識人の影響は依然として強いのかもしれない。

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