産業再生機構なんていらない

執筆者:鮎川彩二2003年4月号

社長人事が迷走したのもむべなるかな。もともと政治的思惑だけで作られた、経済的合理性に欠けたこの組織は、どう理屈をつけようとまやかし以外の何物でもないからだ。発足前の現在ですら、見えてくるのはお寒い内情ばかり……。 政府が昨秋、デフレ対策の目玉として打ち出した「産業再生機構」の社長人事が、迷走に迷走を重ねた揚げ句、二月末にようやく決着した。政府は人選の依頼先である日本経団連の意向を結果的に無視、当初から同機構への出資に消極的だった産業界との亀裂は決定的なものになった。「不良債権処理加速と事業再生を一体で進める」(谷垣禎一産業再生担当相)。政府はこう大風呂敷を拡げて見せるが、実際に協力を取り付けられたのは金融業界だけ。関係者からは早くも「(過剰債務企業だらけの)ゼネコンは対象外」との弱気な声も聞こえ始めている。関係者の思惑が複雑に錯綜した結果、同機構は発足前からすでに設立の目的すら判然としない状態に陥ってしまった。激怒した日本経団連「ベストな人選ができた」。谷垣担当相は二月二十八日夕、再生機構社長に元野村証券副社長の斉藤惇氏を、再生委員会委員長に獨協大学教授の高木新二郎弁護士を充てる人事を発表する席上で、こう胸を張った。

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