「トルコか反体制派か」米国のジレンマ

執筆者:木辺秀行2003年4月号

[ドバイ発]「勝利は詩のような甘さだ」。九日、イラク国境にも近いトルコ南東部の小都市シールトで実施された国会補欠選挙。公正発展党(AKP)のエルドアン党首は、こう皮肉ってみせた。 エルドアン党首は政教分離主義に反する詩を朗読して有罪判決を受けた経歴から議員資格がなく首相に就任できずにいた。このため昨年十一月の選挙で大勝したAKPはナンバー2のギュル氏を首相に起用。「二重権力」の状態だったが、国会は憲法改正でエルドアン氏の出馬を可能にし名実一体のエルドアン政権誕生に道を開いた。 だが、エルドアン氏の表情は満面の笑みとはいかない。直面する米軍の駐留承認問題は、久方ぶりに誕生したトルコ安定政権の命脈を断ち切りかねない難題だ。 三月一日、アンカラの街頭に五万人の市民が集結し、イラク攻撃を検討する米軍への協力反対の声を上げるなか、国会では政府が求めた六万二千人の米軍駐留承認提案が採決されていた。 採決の結果は賛成が反対を上回ったが、承認に必要な出席議員数の過半数には三票足りなかった。六十億ドルの無償資金提供など米国からの経済支援を駐留の見返りに取り付けていたトルコ政府にとっては思わぬ誤算だった。

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