昨年四月に経営破綻したドイツのメディア大手キルヒメディアの「優良資産」だった民放会社「プロジーベンSAT1」が、保有する膨大な映画放映権と併せて、イスラエル系米国人のハイム・サバン氏(五八)に身売りされた。 プロジーベンは、視聴率でドイツ民放二位の「SAT1」など地上波局、ケーブル局を傘下に置いており、欧州大陸主要国の有力テレビ局が、外国資本の手に落ちるのは初めてのケースとなる。シュレーダー首相が「国内での解決を」と呼び掛けたものの、サバン氏が提示した買収総額推定二十億ユーロが、当初独占交渉権を得た独出版大手バウアーのオファーを大きく上回って、キルヒ債権者の決断が下された。買収に意欲を示したといわれる豪出身のメディア王ルパート・マードック氏や、イタリア首相のベルルスコーニ氏など、資金力もアクも強い保守系外資メディア経営者に乗り込まれるよりはましと、ドイツ政府は黙認の姿勢を貫いている。 メディア産業の世界で、政治と無縁の経営者はいない。キルヒを創業、破綻させたレオ・キルヒ氏はバイエルン州の保守系政治家たちの盟友だったが、新オーナーのサバン氏は米民主党の大口献金者で、クリントン前大統領との親交で知られる。イラク問題で米独関係は冷え込んでいるが、クリントン氏はじめ民主党人脈を通じて、独政府への働き掛けがあったとのうわさがもっぱらだ。

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