ラムズフェルドの“古い戦争”

執筆者:名越健郎2003年5月号

 米軍のイラク攻撃を指揮するドナルド・ラムズフェルド国防長官(70)は、周囲にオーラを発散する存在感のある人物である。若い頃、「共和党のケネディ」として将来を嘱望され、米史上最年少で国防長官に就き、今回が2度目のお勤め。歯に衣着せぬ発言で知られ、「仏独は古い欧州」発言はシラク仏大統領を激怒させたが、「欧州の現実を言い当てている」(仏紙ルモンド)との評価もある。 この発言を機に、米国では国連安保理決議に強硬に反対したフランスへの反感が高揚、「イラクに続く標的は、北朝鮮でなくフランス」という笑えない話も出ている。 ラムズフェルド国防長官の記者会見で、記者団が質問した。「フランスはなぜ、フセイン大統領を追放するのを手伝おうとしないのか」「われわれがドイツ軍をフランスから追放した時も、彼らは何も手伝わなかった」 ラムズフェルド長官の会見。「英軍と仏軍の違いは何か」「英国の軍人は料理はできないが、戦闘はできる。フランスの軍人は料理はできるが、戦闘ができない」 ラムズフェルド長官の会見。「フランスはなぜサダム・フセインに甘いのか」「フセインは愛人を持ち、米国を憎み、ベレー帽をかぶるからだ」 バグダッドを制圧し、同長官はさらに自信を深めたようだ。だが、トルコが米軍駐留を認めず戦略転換を迫られたうえ、イラク軍の抵抗や悪天候から一時は戦争長期化が危ぶまれた。米国内では反戦運動や厭戦気分が広がり、ブッシュ大統領らを皮肉るジョークが語られた。

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