特許法を改正せよ!

執筆者:麻生誠2003年6月号

オリンパス元社員の発明報奨金をめぐって最高裁は異例の判決を下した。その根拠は特許法三五条。だが、本当に問題なのは特許法そのものなのだ――。 社員が業務で発明した技術で会社が特許をとり、その特許により会社が大儲けした。社員は会社から、いくら支払ってもらえる法的な権利があるのだろうか。 特許法三五条は、社員が「相当の対価の支払いを受ける権利を有する」と規定している。これに従って、社員が対価(報奨金)の支払いを請求した場合、金額はどうやって決めればいいのだろうか。社内規定などで会社が一方的に決めることができる――そう考えてきた企業は少なくなかった。 しかし、今年四月二十二日に最高裁判決は「一方的には決められない」と史上初めての判断を下し、これまでの認識を大きく覆したのである。 光ディスク読み取り装置に関する発明をめぐるこの裁判。オリンパス光学工業の元社員が発明の対価として二億円(二審で約五千二百万円に変更)の支払いを同社に求めた訴訟の上告審で最高裁は「金額に関する社内規定があっても、それが相当の対価に足りなければ不足分を請求できる」とした。結果、同社に約二百二十九万円の支払いを命じた一、二審判決が確定したのである。つまり会社が一方的に、相当の対価(報奨金)を決めることはできない。その上、裁判官が報奨金が少なすぎると考えれば、司法判断で増額させることが可能になったのである。

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