モスクワで四月にセルゲイ・ユシェンコフ下院議員が射殺された事件の背景として、プーチン政権成立に絡む奥深い疑惑の存在がとりざたされている。 プーチン大統領と対立し、ロンドンに事実上亡命した政商ベレゾフスキー氏と同議員が一時、関係をもっていたため、ロシアの地下社会につながる同氏とのトラブルが事件の原因との見方もある。 しかし、議員の女性秘書であるアレナ・モロゾワ氏が事件後に米国への亡命を申請。弁護士を通じて、一九九九年にモスクワで起きたアパート爆破事件と議員殺害の関係を示唆したことから、事件は別の様相を見せることになった。 アパート爆破事件はチェチェン武装勢力の犯行と公表され、ロシア軍の第二次チェチェン侵攻の口実となった。プーチン氏はこの作戦の推進者の役割を演じて元首の座をつかんでいる。このため、爆破事件は大統領の出身母体であるKGBの仕業との疑惑が今も燻り、議員は調査に関与していた。 女性秘書はアパート爆破事件で母親を失っており、議員と共に事件の核心に迫っていた。亡命申請の背景には「次は自分」との恐怖があったとされる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。