タイの政党として最長の歴史を誇る民主党が、一九五五年の結党以来、最大の危機を迎えている。 同党は二〇〇一年の総選挙で新興のタイ愛国党(党首=タクシン首相)に大敗し野党に転落。二〇〇五年の次期総選挙での政権奪還を目指し、四月下旬の党首選でチュアン党首(前首相)に代わってバンヤット前副党首(六一)を選出した。しかし、下院(定数五百)での勢力は愛国党の二百九十四議席に対し百三十議席。新執行部の視野には愛国党との連立もあり、将来解党の可能性も出ている。 バンヤット氏は「次期総選挙で政権奪還できなければ辞任する」と表明。対してタクシン首相は「愛国党は今後少なくとも二十年間は政権を担当する。悲壮な決意は分かるが結果は明白。いま辞めたほうがいい」と余裕たっぷりだ。 金権色の強いタクシン氏と対照的に清貧を旨とするチュアン前首相は、バンヤット氏の後見人で「タイ政界の寝業師」と呼ばれるサナン前民主党幹事長を警戒。政治資金の不正申告で二〇〇五年まで公職追放中のサナン氏は、次期総選挙で返り咲き愛国党との連立か新党結成を目指すとみられ、民主党分裂は不可避と目されている。

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