一九八六年のソ連と中国の現在

執筆者:田中明彦2003年6月号

 超大国が戦争を行なうという局面では、国際論壇の話題がその戦争一色になるのは当然である。しかし、世界が直面する問題のすべてがイラク問題に収斂するわけではない。イラク戦争の終結とともに、いくつもの問題が注目を集めるようになった。 新たな問題の筆頭は、いうまでもなくSARS(重症急性呼吸器症候群=Severe Acute Respiratory Syndrome)である。『ニューヨーク・タイムズ』紙社説がいうように、SARSは「単なる衛生問題ではない」からである(“The cost of illness”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』(IHT)、五月二日)。「SARS制圧」の後どうなるか 当面のところ最も注目を集めているのは、これを中国の問題ととらえる見方である。「共産党指導者が知っていたにもかかわらず隠蔽しようとした大惨事のニュースは、自由な隣国の科学者たちによってもたらされた。新たな指導者はまだ権力について数カ月しかたっていなかったし、政治的不確定性のあるなかで共産党幹部たちは悪いニュースを隠そうとした。外部に対してだけではなくお互いにもである。しかし、汚染は国境のなかに閉じ込めておけなかった。世界中が、どうなっているのだとドアをたたき始め、共産党も白状せざるをえなくなってしまった。隠蔽工作は、反省の声に変わり、役人の首が飛び、突然マスコミは問題の追及が許され批判があふれだした」。

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